妊婦又は妊娠している可能性のある女性は禁忌のため、投与しないでください1)。
〇各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害の治療、躁病および躁うつ病の躁状態の治療
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないでください2)。
妊娠中にやむを得ずバルプロ酸を投与する場合、可能な限り単独投与することが望ましいです。他の抗てんかん剤(特にカルバマゼピン)と併用時に、奇形を有する児を出産した例がバルプロ酸単独投与時と比較して多いとの疫学的調査報告があります3)。
また、妊娠中の投与により、新生児に呼吸障害、肝障害、低フィブリノーゲン血症、低血糖、退薬症候(神経過敏、過緊張、痙攣、嘔吐)等があらわれるとの報告があります4)。
※先天異常について
二分脊椎児を出産した母親の中に、バルプロ酸を妊娠初期に投与された例が対照群より多いとの疫学的調査報告があり、また、バルプロ酸を投与された母親に、心室中隔欠損等の心奇形や多指症、口蓋裂、尿道下裂等の外表奇形、その他の奇形を有する児を出産したとの報告があります。また、特有の顔貌(前頭部突出、両眼離開、鼻根偏平、浅く長い人中溝、薄い口唇等)を有する児を出産したとの報告があります5)。
※発達障害について
海外で実施された観察研究において、妊娠中に抗てんかん薬を投与されたてんかん患者からの出生児224例を対象に6歳時の知能指数(IQ)[平均値(95%信頼区間)]を比較した結果、バルプロ酸を投与されたてんかん患者からの出生児のIQ[98(95-102)]は、ラモトリギン[108(105-111)]、フェニトイン[109(105-113)]、カルバマゼピン[106(103-109)]を投与されたてんかん患者からの出生児のIQと比較して低かったとの報告があります。なお、バルプロ酸の投与量が1,000mg/日(本研究における中央値)未満の場合は[104(99-109)]、1,000mg/日を超える場合は[94(90-99)]でした6)。
また、海外で実施された観察研究において、妊娠中にバルプロ酸を投与された母親からの出生児508例は、バルプロ酸を投与されていない母親からの出生児655,107例と比較して、自閉症発症リスクが高かったとの報告があります[調整ハザード比:2.9(95%信頼区間:1.7-4.9)]7)。
<参考>
動物実験(マウス)で、バルプロ酸が葉酸代謝を阻害し、新生児の先天性奇形に関与する可能性があるとの報告があります8)。
参考資料
1)セレニカR 電子添文 2024年8月改訂(第5版) 2. 禁忌 2.4
2)セレニカR 電子添文 2024年8月改訂(第5版) 9.5 妊婦 9.5.2
3)セレニカR 電子添文 2024年8月改訂(第5版) 9.5 妊婦 9.5.3
4)セレニカR 電子添文 2024年8月改訂(第5版) 9.5 妊婦 9.5.5
5)セレニカR 電子添文 2024年8月改訂(第5版) 9.5 妊婦 9.5.4
6)セレニカR 電子添文 2024年8月改訂(第5版) 9.5 妊婦 9.5.6
7)セレニカR 電子添文 2024年8月改訂(第5版) 9.5 妊婦 9.5.7
8)セレニカR 電子添文 2024年8月改訂(第5版) 9.5 妊婦 9.5.8
作成年月
2025年1月